図書館は知が集合する空間であり、とても価値がある空間であることは間違い無い。しかし、知が図書館という物理的な空間に制約されている、とも言える。

ついに、紙の本を1冊も置いていない図書館がオープン : ギズモード・ジャパン

図書が空間の制約から解き放たれた

紙の本を置かずに、Kindleに本を入れて貸し出す図書館が登場したとのことだ。私はこの記事を読んで、ついに図書が空間の制約から解き放たれたなと感じた。私は以前から、自分が読みたい論文を学会のウェブサイトで探してダウンロードし、Evernoteに放り込んでタグを付け、いつでも読めるようにしている。もはや図書館で文献をコピーするということはめっきりしなくなってしまった。むしろ、冊子でしか手に入れられない学会誌などがあると、舌打ちをしたくなるときすらある。もともと、物理的に残せないものを、残せるようにしたものが本である。よって、より適した形態があるなら本にこだわる必要は無いのだ。

国際学会では既に電子があたりまえ

国際的に学会業界はオープン化が進み、ペーパレスの流れが強く押し進められているため、我々研究者はその恩恵にあずかることができている。その流れがついに、図書館にも来たと言える。Kindleを借りて、借りたい本を入れて2週間持ち出すことができる。著作権的に問題がなければ複数人に同じ本を貸し出すこともできて、待つことも無くなる。図書館に必要なスペースはKindleを補完しておくキャビネットと、受付があるだけ良いので、学校、公民館など、どこにでも(情報量的に)超巨大な図書館を用意できる。贅沢を言うなら、Kindleよりももっと簡単なデバイスを用意してあげられれば、高齢者や子供にも使いやすくなるだろう。

偶然の出会いは電子版でも得られる

一方で、本との偶然の出会いも大切にしたい。そんなヒトのために、バーチャル書架を作ってはどうだろうか。バーチャル書架に立ち入ると、書架と同じ大きさのディスプレイが自分を囲み、本物そっくりの書架の映像が現れる。ジャンル入力やスワイプなどによって書架を移動できて、背表紙をタップすれば取り出せてそのまま立ち読みできる。あとは借りたいと思ったら、Kindleにダウンロードして持ち出せる。私なんかは、時間制限がないと居心地が良すぎて一日中立ち読みしてしまうかもしれない。

図書館がなくなる日

図書館の形態は少しずつ変わっていくことは間違いない。そしていつの日か、その場所が「図書館」と呼ばれない日がくることになるだろう。その場所は、誰がどのように使い、どのようなコミュニティが集まる場所になっているのだろうか。どうか、使う人のことを中心に考えた、素敵な場所になっていることを期待したい。

図書館戦争 図書館戦争シリーズ(1) (角川文庫)

図書館戦争  図書館戦争シリーズ(1) (角川文庫)
著者:有川 浩